本の紹介

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 1609年、天体望遠鏡を自ら製作して夜空の観測をはじめたイタリアの科学者ガリレオ?ガリレイは、月面にクレーターや山があることを発見しました。ガリレオによる天体望遠鏡を用いた世界初の天体観測、そしてそれにともなう数々の発見が後世の人々に与えた影響は計り知れません。このことにちなみ、国際連合やユネスコ(国連教育科学文化機関)は2009年を1609年から400年の節目の年とし、「世界天文年」(International Year of Astronomy)と定めています。
 「世界天文年」のスローガンは、「宇宙―解き明かすのはあなた」(The Universe: Yours to Discover) です。私たちの住むこの宇宙は未だ多くの謎に包まれています。2009年も残りわずかとなりましたが、何百年、何千年もの長きにわたって人類の心をとらえて離さない「宇宙」にいま一度思いを馳せてみではいかがでしょうか。 


 夜空に浮かぶすべての天体は地球を中心に周っているとする宇宙観は、それを宗教的事実とするキリスト教が大きな力を有していた当時のイタリアにおいてほとんど疑いの余地のないものでした。しかし1543年にポーランドの天文学者コペルニクスが唱えた地動説(太陽中心説)の正しさに確信をもっていたガリレオは、天体望遠鏡を用いた数々の発見によって地動説を科学的に実証しようとします。
  今日では「天文学の父」とも呼ばれるガリレオも、当時は地動説を正当なものとする主張が異端であるとされ、社会的に冷遇されました。本書では彼の手による数式や観察記録、当時使われていた天体望遠鏡の写真などの貴重な資料とともに、真の「宇宙」を見たことのない人々に彼の見た「宇宙」の姿を伝えようとする長く激しい戦いの軌跡が鮮やかに描かれています。数多くの人工衛星が当たり前のように上空に浮かんでいる今日、「はじめて『宇宙』を見た男」としてのガリレオの生き様は、誰の心の中にもある無邪気で純粋な好奇心を呼び起こします。 

 日本における宇宙物理学の第一人者である著者が、太古の昔からつづく宇宙観の変遷や天文学の発展の歴史、さらには今日における最先端の宇宙論について親しみやすい語り口で伝えています。「宇宙について知り、宇宙の中で自分の立ち位置を知ることは、あなたの人生をより楽しく、より豊かなものにしてくれるはず」(p.258)という言葉からもわかるように、本書には著者の宇宙に対する強い思い、そしてそれを一人でも多くの人に伝えたいという情熱が満ちあふれています。
 ガリレオが宇宙にはじめて科学的な眼差しを向けてから400年経った今日、科学者たちは地球の周りに広がる宇宙空間だけでなく、宇宙誕生の謎や宇宙そのものの成り立ちについて知るため、気の遠くなるほどに遠い宇宙を見つめつづけています。137億年にも及ぶ宇宙の歴史の中で、果たして宇宙について「眠れなくなる」ほどに思考することのできる生命体は他にいたのでしょうか。そしてそのような知的生命体はいま現在宇宙のどこかに存在しているのでしょうか。「宇宙のはなし」は尽きることがありません。


 12月の東の夜空に浮かぶオリオン座は、数ある星座の中でも特に有名なもののひとつです。特徴的な三つ星のおかげで目につきやすいためか、エジプトや中国などの古代文明においても特別な存在として認識されていたようです。日本でも『日本書記』や『古事記』に現れる「住吉三神」がオリオン座の三つ星を神格化したものではないかという説があります。
  ギリシャ神話に登場するオリオンは海の神ポセイドンの子供であり、オリオン座は「左手に太い棍棒をたずさえ、右手にはかつて退治したライオンの毛皮をもち、野山の獣たちを狩りたてる人なみすぐれた狩人」(P.30)である彼の姿とされています。夜空に広がる神々の物語の中に、その遠い向こうに広がる未知の時空への扉が潜んでいます。


 
 

 

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