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6月8日 第1回 基礎講座「地域とアート?まちづくり」

2019年06月28日活動報告

 6月8日の午後からは、NPO法人BEPPU PROJECT(ベップ プロジェクト)代表理事 山出 淳也さんを講師にお迎えして、「地域とアート?まちづくり」について講演していただきました。


 
山出さんは今注目のアートプロジェクトを世に送り続けているクリエーターの一人。ニューヨークのMoMA PS1て?インターナショナル?スタシ?オ?フ?ロク?ラムに参加したり、文化庁新進芸術家海外研修員としてハ?リに滞在したりするなど、グローバルに活躍した経験を活かして活動しています。なかでも代表理事を務めるBEPPU PROJECTの活動である市民文化祭「ベップ?アート?マンス」(2010年? 毎年秋開催)や国際芸術祭「混浴温泉世界」(2009年、2012年、2015年)を事例にあげ、地域におけるアートマネジメントについて語られました。
 
BEPPU PROJECTは2005年に大分県別府市で発足し、2006年にNPO法人化した西日本最大規模のアートNPOです。アートを活かした価値創出で地域に貢献し、2016年の時点で約1000を超える事業を展開するまでに至りました。スタートしたきっかけは別府市の商店街にシャッターを閉める店が増え、街が活気を無くしていたことにあると言います。
 
路地裏散策を楽しむ人々や湯上りの人々が行き交う、かつての活気ある街並みを取り戻し、“アートを通じて別府市を再発見してもらう”ために始まりました。その第一歩として今ある空きスペースをリノベーション。街中にアートのプラットホームや関連施設を点在させました。山出さんは「プラットホームを一つつくれば人は集まるかもしれない。しかしそこ以外の街を歩くのか。人が周遊しないと街全体は活性化しない」と語りました。


 
アートスペースやセレクトショップ、サロン、ギャラリーなど人と場所を繋げていく仕組みが構築されると、別府市や大分県など行政との繋がりもでき、市民文化祭や国際芸術祭のプロデュースやディレクションに声がかかるようになったと言います。
 
国際芸術祭「混浴温泉世界」は2009年、2012年、2015年と3年に1度、3回のみ実施されたプロジェクトです。山出さんは自分自身のルーツに戻りたいという思いから、アートを利用して別府市内の路地裏散策ができないかと考えました。さまざまなアーティストの力を借りて、さらに魅力的に彩られた街を、参加者が歩いて巡るのです。まさに、参加者が秘密の場所に案内されていくようなイメージです。
 
山出さんは、ある一人の男性を取りあげました。芸術祭をきっかけにBEPPU PROJECTの事務所に顔をだすようになったこの男性は、芸術祭のお客さまやボランティア、インターン生が来るたびに、市内観光に誘ったり、観光客が楽しめるようにと顔はめパネルを自作したりしていたそうです。「混浴温泉世界2015」では毎晩のように開催された懇親会に皆勤で参加していました。さらに、自分が観客の一人でいるだけでは物足りなかったのか、「ベップ?秘密のナイトダンスツアー」のダンサーとして出演するようになったのです。アーティストとの出会いが、彼の行動を変えた。アートに市民を巻き込むことが一番重要なのだと山出さんは語りました。
 
新たなプロジェクトとして2016年から始まったのが「in BEPPU」。混浴温泉世界のようなグループ展ではなく、1組のアーティストを別府市に招いて開かれる個展です。第1回の開催場所は市民にとって身近な場所である市役所でした。完全予約制のツアーで、市役所を巡る間は作品の説明は全くされません。すると、参加者は何がアートとして置かれているのかを探ろうとします。参加者の見る力と考える力が引き出されたツアーになったと話しました。
 
山出さんは2016年から2020年の指標となるバランス?スコアカードを作成し、目標をスタッフに決めてもらっているそうです。それは、与えられる役割を遂行するだけでなく、実現のために何が必要なのかをスタッフ自ら考えてほしいから。「伺うのは上司の顔色ではなく地域の顔色なんです」。参加者たちは深く頷きます。


 
アートは地域の課題を解決するだけではなく、問題提起をするもの。新たな価値を生み出すには、人と同じことをしていては意味がない。質問する力、問いかける力が必要であり、地域における当たり前を疑ってみるべきなのです。10人いれば10通りの考え方があり、違った価値観がある。いかに違いを感じるか、ほかの考え方に対して「面白い」と受け入れられるか。異なる可能性を認め合うのが社会なのです。
 山出さんの言葉は、本講座が目指す「多様性を認めること」とつながっています。受講者にとって心を揺さぶられる価値ある時間となりました。
 
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